今回は「折込チラシの自粛で分かってきたこと」です。
多くの企業は、折込チラシの自粛中に様々な試算を行っています。
彼らの最大興味は「折込チラシのコストで利益のダウン分をまかなえるか」とい
うものです。簡単に言うと「チラシを止めても利益は確保できるか」です。
今がコロナ禍という特殊な状況であることを加味する必要がありますが、影響の
少ない食品スーパーなどでは有益な試算になると思われます。
例えば、とあるスーパーがB4サイズの折込チラシを3万部@5円で実施している
とします。費用は15万円。この費用をペイするためには利益ベースで15万円以上
引き上げる必要があります。仮に利益率を15%とした場合、その売上は100万円
になります。
現在は折込チラシなしで150万円売り上げている。ここで折込チラシを行えば250
万円以上に売上を上げられるか否かを試算しているのです。
また、前年同月比での売上げ利益の落ち込み分が上記の金額内であるのか否かを
確定させ、折込チラシの評価、効果を試算しています。
そして私が知る限りでは「今は難しいのでは・・・」と多くが判断しています。
これが、「3密を発生させる広告はできない」という折込チラシ自粛のもう1つの
理由なのです。
「折込チラシの費用を利益計上すれば結構いい数字になるじゃないか!?」
「今無理に折込チラシやってもコスト割れするから自粛ね」
「これだけ売れてるならチラシなしで十分。変わりの手を考えてる」
と多くの企業が折込チラシの費用対効果に言及し始めています。
今まで「やめるにやめれない」状態が何年も続き、折込チラシの費用対効果の話
などなかなか議論が進まなかったものが、コロナ禍で止めざるを得ない状況にな
り一気に問題の本質へと議論が進んでいます。
セール告知を行わないことで来店客数にも大きな変化が表れています。
これは、自分の買物行動が変わったことと関連するでしょう。いつ行っても
同じ販売価格なら自分の時間がある曜日や時間に行くようになりました。
今までは無理をしてセールに合わせて出かけていましが、それがなくなると
ストレスフリーなんですね・・・これが。自由な時間に行ける気軽さとセール品
の買い逃しがないという気楽さ。バーゲンハンターは職を失っているかもしれま
せんが、多くの主婦は買い物の自由度が増したのではないでしょうか。
このように「折込チラシの自粛」で多くのことが分かってきました。
今までの折込チラシによるセール商法が顧客を縛り付けるものであったのなら、
次は「顧客を自由にする買い物」へと小売業は進化していくことになるでしょ
う。