新年あけましておめでとうございます。
コロナ禍で急速にシュリンクを続ける折込業界の現在、過去、未来を
見ていきたいと思います。
まずは主要折込会社直近の売上げ推移を見てみましょう
2017年度 2020年度
・読売IS 761億円 490億円 ▲36%
・朝日オリコミ 393億円 237億円 ▲40%
・読宣 333億円 205億円 ▲38%
・朝日大阪 238億円* 147億円 ▲38% *2018年度
おまけ
・新広社 313億円 開示なし
・城北宣広 134億円 112億円 ▲16%
*各社ウェブサイト公表数値から抜粋
過去3年間でコロナ禍の影響もあり、大手各社は4割近く売上げを下げています。
その中で前年比(’18-’19)118%という驚異の売上増を見せたことで、大手の半分の減少に
留めた城北宣広の経営手腕には興味がありますが、色々な憶測があるため参考値とします。
次にメデイア別直近の売上げ推移を見てみましょう
2018年 2020年 増減比 構成比増減
・TV 19,123 16,559 ▲13% ▲8%
・新聞 4,784 3,688 ▲19% ▲10%
・雑誌 1,841 1,223 ▲23% ▲29%
・ラジオ 1,278 1,066 ▲17% ▲15%
・折込チラシ 3,911 2,525 ▲35% ▲32%
・フリーペーパー 2,287 1,539 ▲33% ▲29%
・DM 3,678 3,290 ▲11% ▲5%
*日本の広告費 電通 参照 単位:億円
コロナ禍の概ね2年間で、折込チラシは35%市場規模を減らし、構成比に至っても32%落とし
ています。
これは、広告としての使用頻度が大きく減少したことを意味しています。同様に紙メデイア
である雑誌、フリーペーパーも大きく構成率を落としています。
主な原因は、3蜜を避けるべく折込チラシを主に集客する小売業が、折込自粛に走ったことで
あることには間違いないでしょう。
しかし、使い勝手の最も良かったはずの折込チラシが、コロナ禍では実は最も使い勝手が悪
かった。この事実こそが、多くの企業が折込自粛に走った理由だったと考えています。
企業の担当者からも「集客をコントロールできないチラシは使いづらい」という嘆きをよく
聞きました。逆に折込会社は「お客さんはチラシを待っている。今こそチラシを使おう」み
たいなキャンペーンを張っていましたが、自分本位の勝手な主張だと言わざるを得ません。
例えば、企業側にはこんな想いがありました・・・マスクが入荷したら
「即座にお客さんに告知したい」
「3蜜を避けるため、ゴールド会員さんから優先的に販売したい」
「入荷状況や入荷予定をタイムリイーに届けたい」
「在庫状況をリアルタイムで発信したい」
「他になにを必要としているのか知りたい」
これらの要望に対して折込チラシは何一つ応えられない。
これが、折込チラシの使用頻度がコロナ禍で急減した本当の理由なのです。
当然、上記のような使い方をする広告ではありません。
広く無作為いにセール情報を届けるのが、折込チラシ本来の使用目的です。
しなしながら、新聞購読率が激減し続ける中、そうした本来の目的すら果たせなくなって
きているのが、今の折込チラシの実情であり限界なのです。
お客さんの欲しい情報をほしい手法で、ほしいタイミングで届ける。
これこそが今の昔も広告に求められている使命です。
毎朝、新聞経由で安売り情報をチラシという手法で知りたい人が、今どれほどいるのか。
早晩、企業の顧客接触ポイントはスマホに集約されていきます。
会員カード、クーポン、ポイントカード、セール情報、クレーム対応、アンケートなどなど
全てです。
逆説的に言えば、顧客のスマホにアクセスできない企業には未来がないとも言えます。
その中で、現在行われている折込チラシのWEbチラシ化(画像貼付け)などという、スマホ
の画面では見にくいことこの上ない手法は、見直されるべき最優先課題になるでしょう。
スマホ画面に最適化されたフォーマットになることで、セール情報の商品画面をタップすれば
ネット購買や買忘れメモに早変わりし、ただ商品と金額が表示されていた折込チラシ画像の
数倍便利になるでしょう。また、制作側の手間を考えても、折込チラシとWebチラシの主従関
係が逆転する日はそう遠くはないと考えるのが普通です。
他方、費用においても折込チラシのメリットは、もはやありません。
30年前は、地域が限定できる広告といえば、折込チラシしかありませんでした。
1枚5円や10円でつくることができ、配布枚数も100枚単位で調整可能、数十万円あればできる
手軽な広告でした。
新聞やラジオ、雑誌と比較すれば、とてもお値打ちであり、機動力もあり使い勝手も良かった
しかし、インターネットが発明され広告に活用され始めてからは、この概念は通用しなくなり
ました。
今までの比較対象が変わったからです。
新聞やラジオ、雑誌と比較すれば圧倒的に安く、使い勝手が良かった折込チラシがインターネ
ットを活用した広告やSNSなどの手法と比較され始めると、一気に高くて使い勝手の悪い広告
へと成り下がってしまいました。
大手寿司チェーンが集客を折込チラシからネットに変えることで、100倍近いコストダウンに
なったとの記事に度肝を抜かれたことは、まだ記憶に新しいでしょう。
ハンバーガーチェーンは更に上をいったと言われています。
このように、活用面からも費用面からも折込チラシが積極的に使われる理由がなくなってきて
いるのです。
しかしながら、コロナ禍でインターネットを使い、絶妙に集客し情報を配信し顧客満足を高め
た小売店を私は知りません。
これは折込チラシの活用が今後も続くということではなく、今後多くの企業で折込チラシ離れ
が加速していく可能性の高さだと思っています。
コロナ禍が一旦落ち着いて、折込チラシを再開している小売業は多くあります。
同時に、代わり映えしない効果や費用の高さ制作面の手間に疑問を感じ、広告構成を見直す企
業も多く出てきています。
3/1000 1000枚まいて3枚した効果がないと言われる折込チラシに数億円かけるなら、デジタ
ル化へ舵を切ったほうがメリットが大きいと気付いたのです。
折込信者上司の舵切りブロックも、このコロナ禍で吹き飛んだと聞きます。
新聞の発行部数が減り続け、活用機会が減り続け、コスト高を叫ばれ続け、紙の無駄と叫ばれ
続ける折込チラシ。
スタグフレーションが加速する今年、費用と効果が今まで以上に追求される広告の中において
折込チラシはその期待に応えれるのか。賞味期限切れが刻々と近づいています。
この先折込業界はどうなるのか・・・
コロナ禍のチラシ自粛の反動で、今年は前年比110%前後で推移するのではないかと思います
その後は、あと3年で現状の50%減、1250億円程度まで市場はシュリンクし、5年後には1000
億円を切り込むでしょう。
独立系の折込会社は身売りか店じまいし、系列系は今以上の系列化でコスト削減に走り人員の
削減の後、配送部門は持ち合いで1社に、営業部門は系列広告会社の1部門として吸収されてい
くと予測します。
どうなるか見てみましょう。
誰も見えない未来。
じっくりと答え合わせをしたいと思います。